ほうはみんな出来ます。はじめにお値段《ねだん》を決《き》めておいてよろしかったらお研《と》ぎいたしましょう。」
「そうですか。どれだけですか。」
「こちらが八|銭《せん》、こちらが十銭、こちらの鋏は二|丁《ちょう》で十五銭にいたしておきましょう。」
「ようござんす。じゃ願います。水がありますか。持って来てあげましょう。その芝《しば》の上がいいですか。どこでもあなたのすきな処《ところ》でおやりなさい。」
「ええ、水は私が持《も》って参《まい》ります。」
「そうですか。そこのかきねのこっち側《がわ》を少し右へついておいでなさい。井戸《いど》があります。」
「へい。それではお研ぎいたしましょう。」
「ええ。」
園丁《えんてい》はまた唐檜《とうひ》の中にはいり洋傘《ようがさ》直しは荷物《にもつ》の底《そこ》の道具《どうぐ》のはいった引き出しをあけ缶《かん》を持って水を取《と》りに行きます。
そのあとで陽《ひ》がまたふっと消《き》え、風が吹《ふ》き、キャラコの洋傘はさびしくゆれます。
それから洋傘直しは缶の水をぱちゃぱちゃこぼしながら戻《もど》って来ます。
鋼砥《かなど》の上で金鋼砂《こ
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