んごうしゃ》がじゃりじゃり云《い》いチュウリップはぷらぷらゆれ、陽がまた降《ふ》って赤い花は光ります。
そこで砥石《といし》に水が張《は》られすっすと払《はら》われ、秋の香魚《あゆ》の腹《はら》にあるような青い紋《もん》がもう刃物《はもの》の鋼《はがね》にあらわれました。
ひばりはいつか空にのぼって行ってチーチクチーチクやり出します。高い処《ところ》で風がどんどん吹きはじめ雲はだんだん融《と》けていっていつかすっかり明るくなり、太陽は少しの午睡《ごすい》のあとのようにどこか青くぼんやりかすんではいますがたしかにかがやく五月のひるすぎを拵《こしら》えました。
青い上着《うわぎ》の園丁が、唐檜の中から、またいそがしく出て来ます。
「お折角《せっかく》ですね、いい天気になりました。もう一つお願《ねが》いしたいんですがね。」
「何ですか。」
「これですよ。」若い園丁《えんてい》は少し顔を赤くしながら上着のかくしから角柄《つのえ》の西洋剃刀《せいようかみそり》を取り出します。
洋傘《ようがさ》直しはそれを受《う》け取《と》って開《ひら》いて刃《は》をよく改《あらた》めます。
「これはどこ
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