けていましたがひばりはまさか溶けますまい。溶けたとしたらその小さな骨《ほね》を何かの網《あみ》で掬《すく》い上げなくちゃなりません。そいつはあんまり手数です。」
「まあそうですね。しかしひばりのことなどはまあどうなろうと構《かま》わないではありませんか。全体《ぜんたい》ひばりというものは小さなもので、空をチーチクチーチク飛《と》ぶだけのもんです。」
「まあ、そうですね、それでいいでしょう。ところが、おやおや、あんなでもやっぱりいいんですか。向うの唐檜《とうひ》が何だかゆれて踊《おど》り出すらしいのですよ。」
「唐檜ですか。あいつはみんなで、一小隊《いっしょうたい》はありましょう。みんな若《わか》いし擲弾兵《グレナデーア》です。」
「ゆれて踊っているようですが構いませんか。」
「なあに心配《しんぱい》ありません。どうせチュウリップ酒《しゅ》の中の景色《けしき》です。いくら跳《は》ねてもいいじゃありませんか。」
「そいつは全《まった》くそうですね。まあ大目に見ておきましょう。」
「大目に見ないといけません。いい酒だ。ふう。」
「すももも踊り出しますよ。」
「すももは墻壁仕立《しょうへきじた
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