とまで云はれたものですから、まっ赤になって頬《ほほ》をふくらせてどなりました。
「何だと。人をふいごだと。今に薬さへさがしてしまったらこの林ぐらゐ焼っぷくってしまふぞ。」と云ひました。
すると今度は、林の中の小さな水溜《みづたま》りの蘆《あし》の中に居たよしきりが、急いで云ひました。
「おやおやおや、これは一体大きな皮の袋だらうか、それともやっぱり人間だらうか、愕《おどろ》いたもんだねえ、愕いたもんだねえ。びっくりびっくり。くりくりくりくりくり。」
さあ大三はいよいよ怒って、
「何だと畜生。薬さへ取ってしまったらこの林ぐらゐ、くるくるん[#「ん」は小書き]に焼っぷくって見せるぞ。畜生。」
それから百人の人たちを連れて大三は森の空地に来ました。
「いゝか、さあ。さがせ。しっかりさがせ。」大三はまん中に立って云ひました。
みんなガサガサガサガサさがしましたが、どうしてもそんなものはありません。
空では雲が白鰻《しろうなぎ》のやうに光ったり、白豚のやうに這《は》ったりしてゐます。
大三は早くその薬をのんでからだがピンとなることばかり一生けん命考へながら、汗をポタポタ滴《た》らし息
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