をはあはあついて待ってゐました。
みんなはガサガサガサガサやりますけれどもどうもなかなか見つかりません。
そのうちにもうお日さまは空のまん中までおいでになって、林はツーンツーンと鳴り出しました。あゝなるほど、脚気《かくけ》の木がビタミンをほしいよほしいよと云ってるわいと、大三は思ひました。それでもまだすきとほるばらの実はみつかりません。
かけすが、
「やあ象さん、もうおひるです。弁当おあがりなさい。落しますよ。そら。」
と云ひながら、栗《くり》の木の皮を一切れポタッと落して行きました。
「えい畜生。あとで鉄砲を持って来てぶっ放すぞ。」大三ははぎしりしてくやしがりました。
空では白鰻のやうな雲も、みんな飛んで行き、大三は汗をたらしました。まだ見つかりません。よしきりが林の向ふの沼の方に逃げながら、
「ふいごさん。ふいごさん。まだですか。まだですか。まだまだまだまぁだ。」
と云って通りました。
もう夕方になりました。そこでみんなはもうとてもだめだと思ってさがすのをやめてしまひました。大三もしばらくは困って立ってゐましたが、やがてポンと手を叩《たた》いて云ひました。
「ようし。
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