お日さまがあすこをお通りになって、山へおはいりになりますと、あすこは月見草《つきみそう》の花びらのようになります。それもまもなくしぼんで、やがてたそがれ前の銀色《ぎんいろ》と、それから星をちりばめた夜とが来ます。
そのころ、私は、どこへ行き、どこに生まれているでしょう。また、この眼《め》の前の、美《うつく》しい丘《おか》や野原《のはら》も、みな一|秒《びょう》ずつけずられたりくずれたりしています。けれども、もしも、まことのちからが、これらの中にあらわれるときは、すべてのおとろえるもの、しわむもの、さだめないもの、はかないもの、みなかぎりないいのちです。わたくしでさえ、ただ三|秒《びょう》ひらめくときも、半時《はんとき》空にかかるときもいつもおんなじよろこびです」
「けれども、あなたは、高く光のそらにかかります。すべて草や花や鳥は、みなあなたをほめて歌います」
「それはあなたも同じです。すべて私に来て、私をかがやかすものは、あなたをもきらめかします。私に与えられたすべてのほめことばは、そのままあなたに贈《おく》られます。ごらんなさい。まことの瞳《ひとみ》でものを見る人は、人の王のさ
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