わか》いではありませんか。それに雪が降《ふ》るまでには、まだ二か月あるではありませんか」
 「いいえ。私の命《いのち》なんか、なんでもないんです。あなたが、もし、もっと立派《りっぱ》におなりになるためなら、私なんか、百ぺんでも死《し》にます」
 「あら、あなたこそそんなにお立派《りっぱ》ではありませんか。あなたは、たとえば、消《き》えることのない虹《にじ》です。変《か》わらない私です。私などはそれはまことにたよりないのです。ほんの十分か十五分のいのちです。ただ三|秒《びょう》のときさえあります。ところがあなたにかがやく七色はいつまでも変《か》わりません」
 「いいえ、変《か》わります。変《か》わります。私の実《み》の光なんか、もうすぐ風に持《も》って行かれます。雪《ゆき》にうずまって白くなってしまいます。枯《か》れ草《くさ》の中で腐《くさ》ってしまいます」
 虹《にじ》は思わず微笑《わら》いました。
 「ええ、そうです。本とうはどんなものでも変《か》わらないものはないのです。ごらんなさい。向《む》こうのそらはまっさおでしょう。まるでいい孔雀石《くじゃくせき》のようです。けれどもまもなく
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