りにはいっても、あるいはそのまま枯《か》れてしまってもいいのでした。
「虹《にじ》さん。どうか、ちょっとこっちを見てください」めくらぶどうは、ふだんの透《す》きとおる声もどこかへ行って、しわがれた声を風に半分《はんぶん》とられながら叫《さけ》びました。
やさしい虹《にじ》は、うっとり西の碧《あお》いそらをながめていた大きな碧《あお》い瞳《ひとみ》を、めくらぶどうに向《む》けました。
「何かご用でいらっしゃいますか。あなたはめくらぶどうさんでしょう」
めくらぶどうは、まるでぶなの木の葉《は》のようにプリプリふるえて輝《かがや》いて、いきがせわしくて思うように物《もの》が言《い》えませんでした。
「どうか私のうやまいを受《う》けとってください」
虹《にじ》は大きくといきをつきましたので、黄や菫《すみれ》は一つずつ声をあげるように輝《かがや》きました。そして言《い》いました。
「うやまいを受《う》けることは、あなたもおなじです。なぜそんなに陰気《いんき》な顔をなさるのですか」
「私はもう死《し》んでもいいのです」
「どうしてそんなことを、おっしゃるのです。あなたはまだお若《
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