て、たいへんまぶしそうに笑《わら》っています。
 そっちの方から、もずが、まるで音譜《おんぷ》をばらばらにしてふりまいたように飛《と》んで来て、みんな一度《いちど》に、銀《ぎん》のすすきの穂《ほ》にとまりました。
 めくらぶどうは感激《かんげき》して、すきとおった深《ふか》い息《いき》をつき、葉《は》から雫《しずく》をぽたぽたこぼしました。
 東の灰色《はいいろ》の山脈《さんみゃく》の上を、つめたい風がふっと通って、大きな虹《にじ》が、明るい夢《ゆめ》の橋《はし》のようにやさしく空にあらわれました。
 そこでめくらぶどうの青じろい樹液《じゅえき》は、はげしくはげしく波《なみ》うちました。
 そうです。今日《きょう》こそただの一言《ひとこと》でも、虹《にじ》とことばをかわしたい、丘《おか》の上の小さなめくらぶどうの木が、よるのそらに燃《も》える青いほのおよりも、もっと強い、もっとかなしいおもいを、はるかの美《うつく》しい虹《にじ》にささげると、ただこれだけを伝《つた》えたい、ああ、それからならば、それからならば、実《み》や葉《は》が風にちぎられて、あの明るいつめたいまっ白の冬の眠《ねむ》
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