なく書ける)
キッコは思いながらそっと帳面《ちょうめん》をみんな出しました。そして算術帳国語帳理科帳とみんな書きつけました。すると鉛筆《えんぴつ》はまだキッコが手もうごかさないうちにじつに早くじつに立派《りっぱ》にそれを書いてしまうのでした。キッコはもう大悦《おおよろこ》びでそれをにがにがならべて見ていましたがふと算術帳と理科帳と取りちがえて書いたのに気がつきました。この木ペンにはゴムもついていたと思いながら尻《しり》の方のゴムで消そうとしましたらもう今度《こんど》は鉛筆がまるで踊《おど》るように二、三べん動《うご》いて間もなく表紙《ひょうし》はあとも残《のこ》さずきれいになってしまいました。さあ、キッコのよろこんだことこんないい鉛筆をもっていたらもう勉強《べんきょう》も何もいらない。ひとりでどんどんできるんだ。僕《ぼく》はまず家へ帰ったらおっ母《か》さんの前へ行って百けたぐらいの六《むつ》かしい勘定《かんじょう》を一ぺんにやって見せるんだ、それからきっと図画だってうまくできるにちがいない。僕はまず立派《りっぱ》な軍艦《ぐんかん》の絵を書くそれから水車のけしきも書く。けれども早く耗《へ
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