うにじっとしていましたら先生がむちを持《も》って立って「では吉三郎《きちさぶろう》さんと慶助《けいすけ》さんと出て黒板《こくばん》へ書いて下さい。」と云いました。〔キッコは筆記帳《ひっきちょう》をもってはねあがりました。〕そして教壇《きょうだん》へ行ってテーブルの上の白墨《はくぼく》をとっていまの運算《うんざん》を書きつけたのです。そのとき慶助は顔をまっ赤《か》にして半分立ったまま自分の席《せき》でもじもじしていました。キッコは[#ここから横組み]9[#ここで横組み終わり]の字などはどうも少しなまずのひげのようになってうまくないと思いながらおりて来たときようやく慶助が立って行きましたけれども問題《もんだい》を書いただけであとはもうもじもじしていました。
先生はしばらくたって「よし」と云いましたので慶助は戻《もど》って来ました。先生はむちでキッコのを説明《せつめい》しました。
「よろしい、大へんよくできました。」キッコはもうにがにがにがにがわらって戻って来ました。(もう算術《さんじゅつ》だっていっこうひどくない。字だって上手《じょうず》に書ける。算術帳とだって国語帳とだって雑作《ぞうさ》
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