[#ここで横組み終わり] 「みなさん一けた目のからさきにかけて。」と先生が云《い》いました。「一けた目からだ。」とキッコが思ったときでした。不思議《ふしぎ》なことは鉛筆がまるでひとりでうごいて[#ここから横組み]96[#ここで横組み終わり]と書いてしまいました。キッコは自分の手首だか何だかもわからないような気がして呆《あき》れてしばらくぼんやり見ていました。「一けた目がすんだらこんどは二けた目を勘定《かんじょう》して。」と先生が云《い》いました。するとまた鉛筆がうごき出してするするっと[#ここから横組み]288[#ここで横組み終わり]と二けた目までのとこへ書いてしまいました。キッコはもうあんまりびっくりして顔を赤くして堅《かた》くなってだまっていましたら先生がまた「さあできたら寄《よ》せ算をして下さい。」と云いました。またはじまるなと思っていましたらやっぱり、もうただ一いきに一本の線もひっぱって[#ここから横組み]2976[#ここで横組み終わり]と書いてしまいました。
さあもうキッコのよろこんだことそれからびっくりしたこと、何と云っていいかわからないでただもうお湯《ゆ》へ入ったときのよ
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