をぼろぼろこぼしながら見ましたらその鉛筆は灰色《はいいろ》でごそごそしておまけに心の色も黒でなくていかにも変《へん》な鉛筆《えんぴつ》でした。キッコはそこでやっぱりしくしく泣いていました。「ははああんまり面白《おもしろ》くもないのかな。まあ仕方《しかた》ない、わしは外に持《も》っていないからな。」おじいさんはすっと行ってしまいました。
風が来て樺の木はチラチラ光りました。ふりかえって見ましたらおじいさんはもう林の向《むこ》うにまがってしまったのか見えませんでした。キッコはその枝《えだ》きれみたいな変な鉛筆を持ってだまってかくしに入れてうちの方へ歩き出しました。
三
次《つぎ》の日学校の一時間目は算術《さんじゅつ》でした。キッコはふとああ木ペンを持っていないなと思いました。それからそうだ昨日《きのう》の変な木ペンがある。あれを使《つか》おう一時間ぐらいならもつだろうからと考えつきました。
そこでキッコはその鉛筆を出して先生の黒板《こくばん》に書いた問題《もんだい》をごそごその藁紙《わらがみ》の運算帳《うんざんちょう》に書き取《と》りました。
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