たのです。右手のほうのせなかにはあんまり泣《な》いて潰《つぶ》れてしまった馬の目玉のような赤い円いかたがついていました。
キッコは一|寸《すん》ばかりの鉛筆《えんぴつ》を一生《いっしょう》けん命《めい》にぎってひとりでにかにかわらいながら8の字を横《よこ》にたくさん書いていたのです。(めがね、めがね、めがねの横めがね、めがねパン、[#キッコの絵1(fig45473_01.png)入る」くさりのめがね、[#キッコの絵2(fig45473_02.png)入る」)ところがみんなはずいぶんひどくはねあるきました。キッコの机《つくえ》はたびたび誰《だれ》かにぶっつかられて暗礁《あんしょう》に乗《の》りあげた船のようにがたっとゆれました。そのたびにキッコの8の字は変《へん》な洋傘《ようがさ》の柄《え》のように変《かわ》ったりしました。それでもやっぱりキッコはにかにか笑《わら》って書いていました。
「キッコ、汝《うな》の木ペン見せろ。」にわかに巡査《じゅんさ》の慶助《けいすけ》が来てキッコの鉛筆《えんぴつ》をとってしまいました。「見なくてもい、よごせ。」キッコは立ちあがりましたけれども慶助はせいの高
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