みじかい木ぺん
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)古臭《ふるくさ》い
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)水車|小屋《ごや》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから横組み]
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一
キッコの村の学校にはたまりがありませんでしたから雨がふるとみんなは教室で遊びました。ですから教室はあの水車|小屋《ごや》みたいな古臭《ふるくさ》い寒天《かんてん》のような教室でした。みんなは胆取《きもと》りと巡査《じゅんさ》にわかれてあばれています。
「遁《に》げだ、遁げだ、押《おさ》えろ押えろ。」「わぁい、指《ゆび》噛《か》じるこなしだでぁ。」
がやがやがたがた。
ところがキッコは席《せき》も一番前のはじで胆取りにしてはあんまり小さく巡査にも弱かったものですからその中にはいりませんでした。机《つくえ》に座《すわ》って下を向《む》いて唇《くちびる》を噛《か》んでにかにか笑《わら》いながらしきりに何か書いているようでした。
キッコの手は霜《しも》やけで赤くふくれていました。五月になってもまだなおらなかっ
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