ひのきとひなげし
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)髪《かみ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一生|合唱手《コーラス》だわ
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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ひなげしはみんなまっ赤に燃えあがり、めいめい風にぐらぐらゆれて、息もつけないようでした。そのひなげしのうしろの方で、やっぱり風に髪《かみ》もからだも、いちめんもまれて立ちながら若いひのきが云《い》いました。
「おまえたちはみんなまっ赤な帆船《ほぶね》でね、いまがあらしのとこなんだ」
「いやあだ、あたしら、そんな帆船やなんかじゃないわ。せだけ高くてばかあなひのき。」ひなげしどもは、みんないっしょに云いました。
「そして向うに居るのはな、もうみがきたて燃えたての銅《あかがね》づくりのいきものなんだ。」
「いやあだ、お日さま、そんなあかがねなんかじゃないわ。せだけ高くてばかあなひのき。」ひなげしどもはみんないっしょに叫《さけ》びます。
ところがこのときお日さまは、さっさっさっと大きな呼吸を四五へんついてるり色をし
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