にそらを沈んでまゐりました。
さっきのうすくらい野原で一緒だった人たちはいまみな立派に変ってゐました。一郎は楢夫を見ました。楢夫がやはり黄金《きん》いろのきものを着、瓔珞《やうらく》も着けてゐたのです。それから自分を見ました。一郎の足の傷や何かはすっかりなほっていまはまっ白に光りその手はまばゆくいゝ匂《にほひ》だったのです。
みんなはしばらくたゞよろこびの声をあげるばかりでしたがそのうちに一人の子が云ひました。
「此処《ここ》はまるでいゝんだなあ、向ふにあるのは博物館かしら。」
その巨《おほ》きな光る人が微笑《わら》って答へました。
「うむ。博物館もあるぞ。あらゆる世界のできごとがみんな集まってゐる。」
そこで子供らは俄《には》かにいろいろなことを尋ね出しました。一人が云ひました。
「こゝには図書館もあるの。僕アンデルゼンのおはなしやなんかもっと読みたいなあ。」
一人が云ひました。
「こゝの運動場なら何でも出来るなあ、ボールだって投げたってきっとどこまでも行くんだ。」
非常に小さな子は云ひました。
「僕はチョコレートがほしいなあ。」
その巨きな人はしづかに答へました。
「本
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