時にはかにまぶしい黄金《きん》の日光が一郎の足もとに流れて来ました。
顔をあげて見ますと入口がパッとあいて向ふの山の雪がつんつんと白くかゞやきお父さんがまっ黒に見えながら入って来たのでした。
「起ぎだのが。昨夜《ゆべな》寒ぐなぃがったが。」
「いゝえ。」
「火ぁ消《け》でらたもな。おれぁ二度起ぎで燃やした。さあ、口|漱《すす》げ、飯《まま》でげでら、楢夫。」
「うん。」
「家ど山どどっちぁ好《い》い。」
「山の方ぁい、い※[#小書き平仮名ん、241−7]とも学校さ行がれなぃもな。」
するとお父さんが鍋《なべ》を少しあげながら笑ひました。一郎は立ちあがって外に出ました。楢夫もつづいて出ました。
何といふきれいでせう。空がまるで青びかりでツルツルしてその光はツンツンと二人の眼にしみ込みまた太陽を見ますとそれは大きな空の宝石のやうに橙《だいだい》や緑やかゞやきの粉をちらしまぶしさに眼をつむりますと今度はその蒼黒《あをぐろ》いくらやみの中に青あをと光って見えるのです、あたらしく眼をひらいては前の青ぞらに桔梗《ききゃう》いろや黄金《きん》やたくさんの太陽のかげぼふしがくらくらとゆれてかゝっ
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