どんぐりと山猫
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)山猫《やまねこ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)にやあ[#「にやあ」に丸傍点]
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 をかしなはがきが、ある土曜日の夕がた、一郎のうちにきました。

[#ここから3字下げ]
かねた一郎さま 九月十九日
あなたは、ごきげんよろしいほで、けつこです。
あした、めんどなさいばんしますから、おいで
んなさい。とびどぐもたないでくなさい。
                山ねこ 拝
[#ここで字下げ終わり]
 こんなのです。字はまるでへたで、墨もがさがさして指につくくらゐでした。けれども一郎はうれしくてうれしくてたまりませんでした。はがきをそつと学校のかばんにしまつて、うちぢゆうとんだりはねたりしました。
 ね床にもぐつてからも、山猫《やまねこ》のにやあ[#「にやあ」に丸傍点]とした顔や、そのめんだうだといふ裁判のけしきなどを考へて、おそくまでねむりませんでした。
 けれども、一郎が眼をさましたときは、もうすつかり明るくなつてゐました。おもてにでてみると、まはりの山は、み
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