ぐりどもの前にすわつてゐました。まるで奈良《なら》のだいぶつさまにさんけいするみんなの絵のやうだと一郎はおもひました。別当がこんどは、革鞭《かはむち》を二三べん、ひゆうぱちつ、ひゆう、ぱちつと鳴らしました。
空が青くすみわたり、どんぐりはぴかぴかしてじつにきれいでした。
「裁判ももう今日で三日目だぞ、いゝ加減になかなほりをしたらどうだ。」山ねこが、すこし心配さうに、それでもむりに威張つて言ひますと、どんぐりどもは口々に叫びました。
「いえいえ、だめです、なんといつたつて頭のとがつてるのがいちばんえらいんです。そしてわたしがいちばんとがつてゐます。」
「いゝえ、ちがひます。まるいのがえらいのです。いちばんまるいのはわたしです。」
「大きなことだよ。大きなのがいちばんえらいんだよ。わたしがいちばん大きいからわたしがえらいんだよ。」
「さうでないよ。わたしのはうがよほど大きいと、きのふも判事さんがおつしやつたぢやないか。」
「だめだい、そんなこと。せいの高いのだよ。せいの高いことなんだよ。」
「押しつこのえらいひとだよ。押しつこをしてきめるんだよ。」もうみんな、がやがやがやがや言つて、なに
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