どんぐりと山猫
宮沢賢治
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)山猫《やまねこ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)にやあ[#「にやあ」に丸傍点]
−−
をかしなはがきが、ある土曜日の夕がた、一郎のうちにきました。
[#ここから3字下げ]
かねた一郎さま 九月十九日
あなたは、ごきげんよろしいほで、けつこです。
あした、めんどなさいばんしますから、おいで
んなさい。とびどぐもたないでくなさい。
山ねこ 拝
[#ここで字下げ終わり]
こんなのです。字はまるでへたで、墨もがさがさして指につくくらゐでした。けれども一郎はうれしくてうれしくてたまりませんでした。はがきをそつと学校のかばんにしまつて、うちぢゆうとんだりはねたりしました。
ね床にもぐつてからも、山猫《やまねこ》のにやあ[#「にやあ」に丸傍点]とした顔や、そのめんだうだといふ裁判のけしきなどを考へて、おそくまでねむりませんでした。
けれども、一郎が眼をさましたときは、もうすつかり明るくなつてゐました。おもてにでてみると、まはりの山は、み
次へ
全15ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング