す。
ある大きな本家では、いつも旧《きゅう》の八月のはじめに、如来《にょらい》さまのおまつりで分家の子供らをよぶのでしたが、ある年その一人の子が、はしかにかかってやすんでいました。
「如来さんの祭《まつ》りへ行きたい。如来さんの祭りへ行きたい」と、その子は寝《ね》ていて、毎日毎日|言《い》いました。
「祭《まつ》り延《の》ばすから早くよくなれ」本家のおばあさんが見舞《みま》いに行って、その子の頭をなでて言いました。
その子は九月によくなりました。
そこでみんなはよばれました。ところがほかの子供《こども》らは、いままで祭りを延ばされたり、鉛《なまり》の兎《うさぎ》を見舞いにとられたりしたので、なんともおもしろくなくてたまりませんでした。
「あいつのためにひどいめにあった。もう今日は来ても、どうしたってあそばないぞ」と約束《やくそく》しました。
「おお、来たぞ、来たぞ」みんながざしきであそんでいたとき、にわかに一人が叫《さけ》びました。
「ようし、かくれろ」みんなは次《つぎ》の、小さなざしきへかけ込《こ》みました。
そしたらどうです。そのざしきのまん中に、今やっと来たばっかりのはず
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