わっざわっと箒の音がきこえたのです。
も一どこっそり、ざしきをのぞいてみましたが、どのざしきにもたれもいず、ただお日さまの光ばかりそこらいちめん、あかるく降《ふ》っておりました。
こんなのがざしき童子《ぼっこ》です。
「大道《だいどう》めぐり、大道めぐり」
一生けん命《めい》、こう叫《さけ》びながら、ちょうど十人の子供《こども》らが、両手《りょうて》をつないでまるくなり、ぐるぐるぐるぐる座敷《ざしき》のなかをまわっていました。どの子もみんな、そのうちのお振舞《ふるまい》によばれて来たのです。
ぐるぐるぐるぐる、まわってあそんでおりました。
そしたらいつか、十一人になりました。
ひとりも知らない顔がなく、ひとりもおんなじ顔がなく、それでもやっぱり、どう数えても十一人だけおりました。そのふえた一人がざしきぼっこなのだぞと、大人《おとな》が出て来て言《い》いました。
けれどもたれがふえたのか、とにかくみんな、自分だけは、どうしてもざしきぼっこでないと、一生けん命|眼《め》を張《は》って、きちんとすわっておりました。
こんなのがざしきぼっこです。
それからまたこういうので
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