ざしき童子のはなし
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)ざしき童子《ぼっこ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一生けん命|眼《め》を
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 ぼくらの方の、ざしき童子《ぼっこ》のはなしです。

 あかるいひるま、みんなが山へはたらきに出て、こどもがふたり、庭《にわ》であそんでおりました。大きな家にだれもおりませんでしたから、そこらはしんとしています。
 ところが家の、どこかのざしきで、ざわっざわっと箒《ほうき》の音がしたのです。
 ふたりのこどもは、おたがい肩《かた》にしっかりと手を組みあって、こっそり行ってみましたが、どのざしきにもたれもいず、刀《かたな》の箱《はこ》もひっそりとして、かきねの檜《ひのき》が、いよいよ青く見えるきり、たれもどこにもいませんでした。
 ざわっざわっと箒の音がきこえます。
 とおくの百舌《もず》の声なのか、北上《きたかみ》川の瀬《せ》の音か、どこかで豆《まめ》を箕《み》にかけるのか、ふたりでいろいろ考えながら、だまって聴《き》いてみましたが、やっぱりどれでもないようでした。
 たしかにどこかで、ざ
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