から、はさみ無しの一人まけかち[#「はさみ無しの一人まけかち」に傍点]で、じゃんけんをした。ところが、悦治はひとりはさみを出したので、みんなにうんとはやされたほかに鬼になった。悦治は、唇《くちびる》を紫いろにして、河原を走って、喜作を押へたもんだから、鬼は二人になった。それからぼくらは、砂っぱの上や淵を、あっちへ行ったり、こっちへ来たり、押へたり押へられたり、何べんも鬼っこ[#「鬼っこ」に傍点]をした。
しまひにたうとう、しゅっこ[#「しゅっこ」に傍点]一人が鬼になった。しゅっこ[#「しゅっこ」に傍点]はまもなく吉郎《きちらう》をつかまへた。ぼくらはみんな、さいかちの木の下に居てそれを見てゐた。するとしゅっこ[#「しゅっこ」に傍点]が、吉郎、汝《おまい》、上流《かみ》から追って来い、追へ、追へ、と云ひながら、自分はだまって立って見てゐた。吉郎は、口をあいて手をひろげて、上流《かみ》から粘土の上を追って来た。みんなは淵へ飛び込む仕度をした。ぼくは楊《やなぎ》の木にのぼった。そのとき吉郎が、たぶんあの上流《かみ》の粘土が、足についてたためだったらう、みんなの前ですべってころんでしまった。
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