ょうのきものを つけなさる
 かしわばやしの よろこびは
 あなたのそらに かかるまま。」
 画かきがよろこんで手を叩きました。
「うまいうまい。よしよし。夏のおどりの第三夜。みんな順々にここに出て歌うんだ。じぶんの文句でじぶんのふしで歌うんだ。一等賞から九等《くとう》賞まではぼくが大きなメタルを書いて、明日《あした》枝《えだ》にぶらさげてやる。」
 清作もすっかり浮《う》かれて云いました。
「さあ来い。へたな方の一等から九等までは、あしたおれがスポンと切って、こわいとこへ連れてってやるぞ。」
 すると柏《かしわ》の木大王が怒りました。
「何を云うか。無礼者。」
「何が無礼だ。もう九本《くほん》切るだけは、とうに山主の藤助《とうすけ》に酒を買ってあるんだ。」
「そんならおれにはなぜ買わんか。」
「買ういわれがない。」
「いやある、沢山ある。」
「ない。」
 画かきが顔をしかめて手をせわしく振《ふ》って云いました。
「またはじまった。まあぼくがいいようにするから歌をはじめよう。だんだん星も出てきた。いいか、ぼくがうたうよ。賞品のうただよ。
 一とうしょうは 白金メタル
 二とうしょうは 
前へ 次へ
全18ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング