かしわばやしの夜
宮沢賢治
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)日暮《ひぐ》れ
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)絵の具|箱《ばこ》
−−
清作は、さあ日暮《ひぐ》れだぞ、日暮れだぞと云《い》いながら、稗《ひえ》の根もとにせっせと土をかけていました。
そのときはもう、銅《あかがね》づくりのお日さまが、南の山裾《やますそ》の群青《ぐんじょう》いろをしたとこに落ちて、野はらはへんにさびしくなり、白樺《しらかば》の幹などもなにか粉を噴《ふ》いているようでした。
いきなり、向うの柏《かしわ》ばやしの方から、まるで調子はずれの途方《とほう》もない変な声で、
「欝金《うこん》しゃっぽのカンカラカンのカアン。」とどなるのがきこえました。
清作はびっくりして顔いろを変え、鍬《くわ》をなげすてて、足音をたてないように、そっとそっちへ走って行きました。
ちょうどかしわばやしの前まで来たとき、清作はふいに、うしろからえり首をつかまれました。
びっくりして振《ふ》りむいてみますと、赤いトルコ帽《ぼう》をかぶり、鼠《ねずみ》いろのへんなだぶだぶの着もの
次へ
全18ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング