ゞゞゞゞあ
風はどうどう どつどゞゞゞゞう
あられぱらぱらぱらぱらつたゝあ
雨はざあざあ ざつざゞゞゞゞあ」
「あつだめだ、霧が落ちてきた。」とふくろふの副官が高く叫びました。
なるほど月はもう青白い霧にかくされてしまつてぼおつと円く見えるだけ、その霧はまるで矢のやうに林の中に降りてくるのでした。
柏《かしは》の木はみんな度をうしなつて、片脚をあげたり両手をそつちへのばしたり、眼をつりあげたりしたまゝ化石したやうにつつ立つてしまひました。
冷たい霧がさつと清作の顔にかゝりました。画《ゑ》かきはもうどこへ行つたか赤いしやつぽだけがはふり出してあつて、自分はかげもかたちもありませんでした。
霧の中を飛び術のまだできてゐないふくろふの、ばたばた遁《に》げて行く音がしました。
清作はそこで林を出ました。柏の木はみんな踊のまゝの形で残念さうに横眼で清作を見送りました。
林を出てから空を見ますと、さつきまでお月さまのあつたあたりはやつとぼんやりあかるくて、そこを黒い犬のやうな形の雲がかけて行き、林のずうつと向ふの沼森のあたりから、
「赤いしやつぽのカンカラカンのカアン。」と画かき
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