来ました。子供らはまるで飛びあがる位輝やきました。
 北から氷のやうに冷たい透きとほった風がゴーッと吹いて来ました。
「さよなら、おっかさん。」「さよなら、おっかさん。」子供らはみんな一度に雨のやうに枝から飛び下りました。
 北風が笑って、
「今年もこれでまづさよならさよならって云ふわけだ。」と云ひながらつめたいガラスのマントをひらめかして向ふへ行ってしまひました。
 お日様は燃える宝石のやうに東の空にかかり、あらんかぎりのかゞやきを悲しむ母親の木と旅に出た子供らとに投げておやりなさいました。



底本:「新修宮沢賢治全集 第八巻」筑摩書房
   1979(昭和54)年5月15日初版第1刷発行
   1984(昭和59)年1月30日初版第7刷発行
入力:林 幸雄
校正:久保格
2002年11月10日作成
青空文庫作成ファイル:
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