うとく》の残滓《ざんし》を、色あせた仮面《かめん》によって純真《じゅんしん》な心意《しんい》の所有者《しょゆうしゃ》たちに欺《あざむ》き与《あた》えんとするものではない。
二 これらは新しい、よりよい世界《せかい》の構成材料《こうせいざいりょう》を提供《ていきょう》しようとはする。けれどもそれは全《まった》く、作者に未知《みち》な絶《た》えざる驚異《きょうい》に値《あたい》する世界|自身《じしん》の発展《はってん》であって、けっして畸形《きけい》に捏《こ》ねあげられた煤色《すすいろ》のユートピアではない。
三 これらはけっして偽《いつわり》でも仮[#「仮」に「ママ」の注記]空でも窃盗《せっとう》でもない。
[#ここから3字下げ]
多少《たしょう》の再度《さいど》の内省《ないせい》と分析《ぶんせき》とはあっても、たしかにこのとおりその時|心象《しんしょう》の中に現《あら》われたものである。ゆえにそれは、どんなに馬鹿《ばか》げていても、難解《なんかい》でも必《かなら》ず心の深部《しんぶ》において万人《ばんにん》の共通《きょうつう》である。卑怯《ひきょう》な成人《せいじん》たちに畢竟《ひっきょう》不可解《ふかかい》なだけである。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから1字下げ、折り返して3字下げ]
四 これは田園《でんえん》の新鮮《しんせん》な産物《さんぶつ》である。われらは田園の風と光の中からつややかな果実《かじつ》や、青い蔬菜《そさい》といっしょにこれらの心象スケッチを世間《せけん》に提供するものである。
[#ここから3字下げ]
注文の多い料理店[#「注文の多い料理店」に傍点]はその十二|巻《かん》のセリーズの中の第一冊《だいいっさつ》でまずその古風《こふう》な童話《どうわ》としての形式《けいしき》と地方色[#「地方色」は底本では「地方名」]とをもって類集《るいしゅう》したものであって次《つぎ》の九|編《へん》からなる。
[#ここで字下げ終わり]
 目次と[#「目次と」に傍点]…………その説明[#「その説明」に傍点]
  (中略、ここに「注文《ちゅうもん》の多い料理店《りょうりてん》」の中扉《なかとびら》のカットを挿入《そうにゅう》してある)
 1 どんぐりと山猫[#「どんぐりと山猫」に傍点]
[#ここから3字下げ]
山猫拝《やまねこはい》と書いたおかしな葉書《はがき
前へ 次へ
全4ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング