まことはたのしくあかるいのだ
     ※[#始め二重パーレン、1−2−54]みんなむかしからのきやうだいなのだから
      けつしてひとりをいのつてはいけない※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
ああ わたくしはけつしてさうしませんでした
あいつがなくなつてからあとのよるひる
わたくしはただの一どたりと
あいつだけがいいとこに行けばいいと
さういのりはしなかつたとおもひます
[#地付き](一九二三、八、一)
[#改ページ]

  オホーツク挽歌


海面は朝の炭酸のためにすつかり銹びた
緑青《ろくしやう》のとこもあれば藍銅鉱《アズライト》のとこもある
むかふの波のちゞれたあたりはずゐぶんひどい瑠璃液《るりえき》だ
チモシイの穂がこんなにみじかくなつて
かはるがはるかぜにふかれてゐる
  (それは青いいろのピアノの鍵で
   かはるがはる風に押されてゐる)
あるいはみじかい変種だらう
しづくのなかに朝顔が咲いてゐる
モーニンググローリのそのグローリ
  いまさつきの曠原風の荷馬車がくる
  年老つた白い重挽馬は首を垂れ
  またこの男のひとのよさは
  わたくしがさつきあの
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