オい蛍光板《けいくわうばん》になつて
いよいよあやしい苹果の匂を発散し
なめらかにつめたい窓硝子さへ越えてくる
青森だからといふのではなく
大てい月がこんなやうな暁ちかく
巻積雲にはひるとき……
     ※[#始め二重パーレン、1−2−54]おいおい あの顔いろは少し青かつたよ※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
だまつてゐろ
おれのいもうとの死顔が
まつ青だらうが黒からうが
きさまにどう斯う云はれるか
あいつはどこへ堕ちようと
もう無上道に属してゐる
力にみちてそこを進むものは
どの空間にでも勇んでとびこんで行くのだ
ぢきもう東の鋼もひかる
ほんたうにけふの……きのふのひるまなら
おれたちはあの重い赤いポムプを……
     ※[#始め二重パーレン、1−2−54]もひとつきかせてあげよう
      ね じつさいね
      あのときの眼は白かつたよ
      すぐ瞑りかねてゐたよ※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
まだいつてゐるのか
もうぢきよるはあけるのに
すべてあるがごとくにあり
かゞやくごとくにかがやくもの
おまへの武器やあらゆるものは
おまへにくらくおそろし
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