右中央に]
東岩手火山
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東岩手火山
月は水銀 後夜《ごや》の喪主《もしゆ》
火山|礫《れき》は夜《よる》の沈澱《ちんでん》
火口の巨《おほ》きなゑぐりを見ては
たれもみんな愕くはずだ
(風としづけさ)
いま漂着《へうちやく》する薬師|外輪山《ぐわいりんざん》
頂上の石標もある
(月光は水銀 月光は水銀)
※[#始め二重パーレン、1−2−54]こんなことはじつにまれです
向ふの黒い山……つて それですか
それはここのつづきです
ここのつづきの外輪山です
あすこのてつぺんが絶頂です
向ふの?
向ふのは御室火口です
これから外輪山をめぐるのですけれども
いまはまだなんにも見えませんから
もすこし明るくなつてからにしませう
えゝ 太陽が出なくても
あかるくなつて
西岩手火山のはうの火口湖やなにか
見えるやうにさへなればいいんです
お日さまはあすこらへんで拝みます※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
黒い絶頂の右肩と
そのときのまつ赤な太陽
わたくしは見てゐる
あんまり真赤な幻想の太陽だ
※[#始め二重パーレン、1−2−
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