刈れ
   そんな髪をしてゐるから
   そんなことも考へるのだ)
[#地付き](一九二二、九、七)
[#改ページ]

  銅線


おい 銅線をつかつたな
とんぼのからだの銅線をつかひ出したな
   はんのき はんのき
   交錯|光乱転《くわうらんてん》
気圏日本では
たうとう電線に銅をつかひ出した
  (光るものは碍子
   過ぎて行くものは赤い萱の穂)
[#地付き](一九二二、九、一七)
[#改ページ]

  滝沢野


光波測定《くわうはそくてい》の誤差《ごさ》から
から松のしんは徒長《とちやう》し
柏の木の烏瓜《からすうり》ランタン
  (ひるの鳥は曠野に啼き
   あざみは青い棘に遷《うつ》る)
太陽が梢に発射するとき
暗い林の入口にひとりたたずむものは
四角な若い樺の木で
Green Dwarf といふ品種
日光のために燃え尽きさうになりながら
燃えきらず青くけむるその木
羽虫は一疋づつ光り
鞍掛や銀の錯乱
   (寛政十一年は百二十年前です)
そらの魚の涎《よだ》れはふりかかり
天末線《スカイライン》の恐ろしさ
[#地付き](一九二二、九、一七)
[#改丁、ページの左
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