洗はれてゐる
その長いものは一体舟か
それともそりか
あんまりロシヤふうだよ

沼に生えるものはやなぎやサラド
きれいな蘆《よし》のサラドだ
[#地付き](一九二二、九、七)
[#改ページ]

  電線工夫


でんしんばしらの気まぐれ碍子の修繕者
雲とあめとの下のあなたに忠告いたします
それではあんまりアラビアンナイト型です
からだをそんなに黒くかつきり鍵にまげ
外套の裾もぬれてあやしく垂れ
ひどく手先を動かすでもないその修繕は
あんまりアラビアンナイト型です
あいつは悪魔のためにあの上に
つけられたのだと云はれたとき
どうあなたは弁解をするつもりです
[#地付き](一九二二、九、七)
[#改ページ]

  たび人


あめの稲田の中を行くもの
海坊主林《うみばうずばやし》のはうへ急ぐもの
雲と山との陰気のなかへ歩くもの
もつと合羽をしつかりしめろ
[#地付き](一九二二、九、七)
[#改ページ]

  竹と楢


煩悶《はんもん》ですか
煩悶ならば
雨の降るとき
竹と楢《なら》との林の中がいいのです
  (おまへこそ髪を刈れ)
竹と楢との青い林の中がいいのです
  (おまへこそ髪を
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