にはひつてゐるし
はやしのくらいとこをあるいてゐると
三日月《みかづき》がたのくちびるのあとで
肱やずぼんがいつぱいになる
[#地付き](一九二三、一〇、二八)
[#改ページ]

  鎔岩流


喪神のしろいかがみが
薬師火口のいただきにかかり
日かげになつた火山|礫堆《れきたい》の中腹から
畏るべくかなしむべき砕塊熔岩《ブロツクレーバ》の黒
わたくしはさつきの柏や松の野原をよぎるときから
なにかあかるい曠原風の情調を
ばらばらにするやうなひどいけしきが
展かれるとはおもつてゐた
けれどもここは空気も深い淵になつてゐて
ごく強力な鬼神たちの棲みかだ
一ぴきの鳥さへも見えない
わたくしがあぶなくその一一の岩塊《ブロツク》をふみ
すこしの小高いところにのぼり
さらにつくづくとこの焼石のひろがりをみわたせば
雪を越えてきたつめたい風はみねから吹き
雲はあらはれてつぎからつぎと消え
いちいちの火山塊《ブロツク》の黒いかげ
貞享四年のちひさな噴火から
およそ二百三十五年のあひだに
空気のなかの酸素や炭酸瓦斯
これら清洌な試薬《しやく》によつて
どれくらゐの風化《ふうくわ》が行はれ
どんな植物が生
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