始め二重パーレン、1−2−54]ギルちやん青くてすきとほるやうだつたよ※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
 ※[#始め二重パーレン、1−2−54]鳥がね たくさんたねまきのときのやうに
  ばあつと空を通つたの
  でもギルちやんだまつてゐたよ※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
 ※[#始め二重パーレン、1−2−54]お日さまあんまり変に飴いろだつたわねえ※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
 ※[#始め二重パーレン、1−2−54]ギルちやんちつともぼくたちのことみないんだもの
  ぼくほんたうにつらかつた※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
 ※[#始め二重パーレン、1−2−54]さつきおもだかのとこであんまりはしやいでたねえ※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
 ※[#始め二重パーレン、1−2−54]どうしてギルちやんぼくたちのことみなかつたらう
  忘れたらうかあんなにいつしよにあそんだのに※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
かんがへださなければならないことは
どうしてもかんがへださなければならない
とし子はみんなが死ぬとなづける
そのやりかたを通つて行き
それからさきどこへ行つたかわからない
それはおれたちの空間の方向ではかられない
感ぜられない方向を感じようとするときは
たれだつてみんなぐるぐるする
 ※[#始め二重パーレン、1−2−54]耳ごうど鳴つてさつぱり聞けなぐなつたんちやい※[#終わり二重パーレン、1−2−55]
さう甘えるやうに言つてから
たしかにあいつはじぶんのまはりの
眼にははつきりみえてゐる
なつかしいひとたちの声をきかなかつた
にはかに呼吸がとまり脈がうたなくなり
それからわたくしがはしつて行つたとき
あのきれいな眼が
なにかを索めるやうに空しくうごいてゐた
それはもうわたくしたちの空間を二度と見なかつた
それからあとであいつはなにを感じたらう
それはまだおれたちの世界の幻視をみ
おれたちのせかいの幻聴をきいたらう
わたくしがその耳もとで
遠いところから声をとつてきて
そらや愛やりんごや風 すべての勢力のたのしい根源
万象同帰のそのいみじい生物の名を
ちからいつぱいちからいつぱい叫んだとき
あいつは二へんうなづくやうに息をした
白い尖つたあごや頬がゆすれて
ちひさいときよくおどけたときにしたやうな
あんな偶
前へ 次へ
全56ページ中39ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング