な》めい/\自分こそは真先《まつさき》に見付けたのだから、自分が捕るのが当然だと言ひ張つて、果《はて》しがつかず、ガヤ/\と騒いでをるのでした。爺さんは慈悲心の深い人でしたから、これを見ると可哀《かはい》さうで堪《たま》らなくなりました。そこで爺さんは人混みを押分けて前に出て申しました――
「マア/\皆さん、ちよつと私《わたし》のいふことを聞いて下さい。一体鶴は千年の齢《よはひ》をもつといふものですから、この鶴は未《ま》だ/\永く生きのびることが出来ます。それだのに、あなたがたがこれを捕り、殺して喰《た》べたところで、たゞ一時おいしいと思ふだけで、何にもなりません。又これを他人に売つたところが大した金にもなりません。そして買つた人は矢張りそれを殺して喰べるでせう。そんな殺生をするよりか、これを助けて、逃がしてやつた方が、立派な功徳になります。どうぞこの鶴は私に売つて下さい。私はたんとお金も持つてはゐませんけれど、今日の売り溜《だ》めを皆《みんな》あげますから、それを、あなたがた、この鶴を見付けた人達の間で分けて、鶴は私に下さい。若《も》し又それでもお銭《あし》が足りないなら明日《あした
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