。そんなことをきいてゐるよつかも、早くこの服を着てくれ給《たま》へ。僕困つてゐるんだ。」
 吉ちやんは首を横にふりました。
「そんな追剥《おいは》ぎなんか僕出来ない。それにオレ・リユク・ウイのおぢいさんが、二番目の鳥居のも、取つちやいけないと言つたんだもの。」
「あのおぢいさんの言ふことなんか、当てになるものかね。いゝから僕があげるといふのだ。追剥ぎぢやない。どうか取つてくれ給へ。」
 吉ちやんも、洋服がとうから欲しかつたのでした。けれども吉ちやんの家《うち》は、お金のあるうちでなかつたので、それがなか/\出来さうにもなかつたのです。ですから吉ちやんはこの人形の洋服が、ばかに欲しくなりました。何しろ立派な服でしたから。吉ちやんは大臣や、陸海軍の大将の服でも、こんなに沢山金モールがついて、勲章がかざつてあるとは思ひませんでした。
「ではねえ、僕に貸してくれ給へ。きたないけれど、その間僕のきものを着てゐてねえ……三番目の鳥居に行くまでゝいゝのだよ。お土産ができたら、僕直ぐに家《うち》へ帰るのだから。」
「あゝいゝとも/\。さあ/\着給へ、着給へ。」
 人形はさつさと立派な洋服を脱いで、吉ち
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