とも言ひはしませんよ。」
と、竜の首になつてゐるところが、不意に口をきゝました。
 吉ちやんはびつくりしました。
「おや、不思議な自動車だ、物をいふのねえ。」
「えゝ、この国のものは、何でも物を言ひますよ。」
「さうかね。――うん、僕欲しいね、この自動車が――。それでもオレ・リユク・ウイのおぢいさんが、一番目の鳥居のものは、取つちやいけないつていひつけたから……」
「なあに、あのおぢいさんの言ふことなんか当てになりやしません。早くお取んなさい。まあ乗つて御覧なさい、私《わたし》は一時間に千里走りますよ。」
「千里! 一時間に? うん、ぢや乗つてみよう。でも僕のものにするんぢやないよ。でないとおぢいさんに知れると悪いから。」
「只《ただ》乗るだけですか。」
と、自動車の竜は、ちよつと首を傾げました。
「困りましたなあ。そして乗つてしまつたら、あとは置いてけぼりにされるんですか。」
「だつて外にもつといゝお土産があるから、オレ・リユク・ウイのおぢいさんが、取つちやあいけないと言つたもの。」
「では仕方がありません。あなたが飽《あ》きがくるまでお乗りなさい。どうせ私《わたし》はあなたのおうち
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