、そこにあつたものは、お前が取つてもいゝ。けれどもそんなものは本当に、お前のためにならんから、欲しくても取らないで、三番目の鳥居に行つてから、始めて取るのだよ。それではわしはこゝで失敬する。日本へ帰るのはわけはない。お土産さへ取れば、あとは独りで帰れるから。」
 オレ・リユク・ウイはさう言つたかと思ふと、ふとその姿を消してしまひました。
 一番目の鳥居に来てみますと、果して、そこに一つの豆自動車がありました。けれどもその自動車は、あたり前の形をしてゐませんで、前の方が竜の首になつて、乗るところは丁度その背中に当るところでした。そして金と銀とで全体ができて、いろ/\の宝石、ダイヤモンド、紅玉《ルビー》、碧玉《サフアイヤ》、エメラルドなどでかざつて、ぴか/\光つてをりました。
「おや、珍らしい自動車だなあ。」
 吉ちやんは思はず、足をそこに止めて、見とれてをります。
「僕《ぼく》もこんな自動車が一つ欲しいな。」
 おぢいさんの言つたことなんか忘れて、吉ちやんは、欲しいと思ひました。すると、直《す》ぐに、
「さあ/\お取んなさい/\/\/\、お取りになれば、あなたのものですよ。誰《だれ》も何
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