けました。
 それは綺麗な不思議な絵をかいた傘でした。子供の顔をした花やら、人間のやうに歩く動物やら、まだみたこともない形や色をしたものが、沢山にかいてありました。しかも、それが活動写真のやうに、動くのでした。
「これが夢の国ですか。変なところですねえ。日本とはまるでちがつてゐる。」
 吉ちやんが言ひますと、オレ・リユク・ウイは、
「日本のやうなところもあるよ。そこが見たければ、つれて行つてあげるよ。ちよつと眼をつぶりなさい。」
と、言ひました。


    二

「あゝ本当に不思議々々々。」
と、吉《よし》ちやんは叫びました。
「おぢいさんこゝはどこ? えゝ? 浅草の観音様?」
「さあ、さうかも知れない。夢の国の処《ところ》の名はむづかしいから、言はないで置かう。」
「あれ、あすこに石の鳥居が見えますよ。けれども仲見世《なかみせ》はありませんね。」
「うん、そんなものはない、けれどもね、一つお前に言つて置くことがある。それはお前にどつさりお土産をやらうといふことだ。併《しか》し、わしのいふとほりにしなければいけないよ。いゝか、あの鳥居が三つあるから、そのうちの一番目のでも二番目のでも
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