いことが一つ起つて、大変失礼いたしました。」
「はあ、さうですか……成程、あなたの顔はあをいですよ。一体どんなことが起つたのですか。」
と、吉ちやんはもつたいらしく大人ぶつて言ひました。
「えゝそれはあなたに申しかねますが、実のところ、私《わたし》の一人娘が、今度世界が元へもどる拍子に、どこか身体《からだ》をぶつけたと見えて、死んでしまつたのでございます。」
吉ちやんが何かいはうとすると、大黒様がポケツトの中から小さな声で、
「そんなことなら、僕が直《す》ぐよくしてあげますと言ひなさい。」
と、勧めました。
「さうですか、えゝと、では僕がよくしてあげませう。」
と、吉ちやんはえらさうに言ひましたので、市長は大変|悦《よろこ》びまして、吉ちやんをつれて娘のところへ来ました。大黒様はみんな人を去らしてしまへと、小さな声で吉ちやんに言ひますので、吉ちやんは、
「ではちよつとみんなこの室《へや》を去つて下さい。そして私《わたし》がよしといふまで、見てはいけません。」
と、いひつけました。
皆《みん》なが去つてしまふと、大黒様がまた言ひました。
「またそのおしやもじの焼けない方で、娘の顔を撫
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