は鏡の市といふところさ。やはり夢の国のうちなんだよ。だがね、こゝで一つ面白いことをして遊ばう。あの逆さまの人や物を、ひつくり返してみよう。お前あのおしやもじを持つてゐるね。」
「えゝ、こゝにあります。」
「それを出して、焼けてゐない方を前へ向けて、クウル、クリイル、ケーレと呪文《じゆもん》をとなへるのだ。いゝか、やつてみなさい。」
吉ちやんはそのとほりにしますと、不思議/\、音もしないで、ピヨコリと、人でも物でも皆当り前になりました。するとそこいらにゐた人達《ひとたち》が、うよ/\と自動車のまはりへ集まつて来ました。
「有難うございます/\。あなたのお蔭《かげ》でみんなが、ちやんとなつて助かりました。あなたは神様でございます。」
一人々々ぺこ/\とお礼を言ひます。そのうちに一人の立派な服を着た人が、その中から進み出て、丁寧にお辞儀をいたしました。
「私《わたし》は、この市《まち》の長をつとめてゐる者のところから参りました。あなたがみんなの難儀をお救ひ下さいましたから、お礼に御馳走《ごちさう》をしたいと申してをります。どうぞおいで下さいませんか。」
大黒様はポケツトの中から、行くと
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