/\改良を加へなければいけないことを見てとつた。
 そんなこととは知らぬフランス人は大得意で、いろ/\なものを見せて、えらく自慢をするのだつた。
「日本なんか鉄砲があつても、まだ火繩銃《ひなはじう》くらゐのものでせう。早くこんな立派な鉄砲や大砲を使ふやうになさい。使ひ方が分からなけりや、こちらから先生をあげますから。」
 少佐は何をこいつら、失礼なことをいふかと思つたが、静かに日本のことを考へると、またさういはれるのも止《や》むを得ないと悟つた。それほど日本は何事にもまだ幼稚であつたのだ。けれども、少佐自身には深い考へがあつた。
「なあに、長いことぢやない。今にもつと/\すぐれた兵器をこしらへて、アツといはしてやるから。」
 ところが、調子に乗るくせのあるフランス人は、少佐がうはべに感心してゐるのを見ると、ます/\得意になつて、とうとう秘蔵の最新式大砲まで見せたのだ。
「これはミトライユといふ最新式の大砲です。プロシヤの豚なんか、これでめちやくちやにやつつけますよ。」
 ミトライユは今日でいへば機関砲のことで、日清戦争の頃には軍艦に据《す》ゑつけてあつたし、又陸軍でも台湾征伐に使つたも
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