私が負だ。又もし君の的を私が残らずうつて、君が新たにうつべき的を見つけられない場合には、今度は私が的をえらぶから、それを君がうてばよい。それを君がうつたら、私が降参しようし、うてなかつたら、私の勝だ。」
弾で書く文字
話はきまつた。みんなはすぐつれ立つて射撃場へ行つた。そこには丁度フランス兵の一隊も射撃演習に来てゐたので、この珍しい決闘射撃のことを知ると、みんな見物することになつた。
最初は普通の標的の点取射撃で、どちらも名人のことだから、無造作に満点で、勝負なしに終つた。
次にダンリ中尉は速射をした。扱ひにくいその頃《ころ》の小銃で、一分間七発もうつて、それがいづれも黒点をうちぬくのだから、神技ともいふべき素晴しい腕前であつた。しかし、上村少佐はそれに輪をかけた速さで、一分間十発もうつて、やつぱり黒点のまん中をうちぬいて、フランスの軍人たちをあつといはせた。
ダンリ中尉もいさゝか驚いたやうだが、今度は他《ほか》の人に銅貨を空にほふり上げさせて、それが地面に落ちきらないうちに、ポン/\打つのだつた。百発百中で、見てゐる多くの仏人たちはその見事さに手を拍つて悦んだ。
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