》つて生命が危ないのです。それに鱶の泳ぐのはとても速いのですから、すぐ追つかれてしまひます。
それでは上の船へ合図をして、引上げて貰《もら》はうとすれば鱶は、待つてゐましたとばかり、くるりと仰向《あふむ》けに引つくり返り、下の方から足をがつぷりと喰《く》ひ切つてしまふかも知れません。もう絶体絶命です。仕方なしに、かなはないまでもと、今太郎君は又もや護身用の大ナイフを握りしめて、そこにじつと立つてゐました。
でも、鱶の方でも、妙な、丸つこい、てか/\光る禿頭《はげあたま》に、大きな三つ目をもつた怪物が立つてゐるものですから、さう、たやすくは飛ついて来ません。相変らず、小さな凄い目で、こちらを睨んでゐるつきりです。けれども、よく/\見てゐると、その大きな鰭《ひれ》がほんの僅《わづ》かづつ動いて、猛悪な魚の形はだん/\明瞭になつて来ます。確《たしか》にじり/\近寄つて来るのです。
そのうち今太郎君は、むき出しになつてゐる両方の手が、鱶の食慾《しよくよく》をそゝり立てはしまいかと気遣つたので、そつと後《うしろ》の方へ廻《まは》しました。
鱶はいよ/\近寄つて来ました。余り恐しいので、今
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