》のお札といつて、なか/\有難いものだ。もし今日お前が山に行つて、何か恐ろしいめにあつたなら、その一枚をそこに投げて、逃げるのだよ。それから後に又そんなことがあつたら、そのたんびに一枚づゝ投げて、お寺へ逃げて帰んなさい。いゝか、よく気をつけて行きなさい。」
 豆小僧ははい/\と言つて、浮かない顔をして、山に柴刈りに行きました。


    三

 山へ行つてみますと、その日も婆《ばあ》さんは来てをりました。しかし豆小僧が妙にふさぎ込んで、眼《め》の隅《すみ》から婆さんをぢろ/\と眺《なが》めるやうですから、婆さんは気がついたらしく、れいの恐ろしい眼に角を立ててききました。
「豆小僧さん、お前はわたしのことを豆和尚さんに言ひはしなかつたらうね。」
 豆小僧は黙つて首を横に強く振りました。
「言はないことはあるまい。言つたら言つたと白状しなさい。嘘《うそ》をつくとなほひどいよ。」
 でも豆小僧はやはり首を横にふりました。自分でも、何にも言はないと、かたく信じてゐるのでしたから。
 婆さんはそれを見ると機嫌《きげん》をなほして、いつものとほり柴《しば》を刈つて、たばねてやつてから言ひました。
前へ 次へ
全10ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮原 晃一郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング