したから、豆小僧はえりもとから水をかけられたやうに、ぞつとして何にも言はないで、お寺へ帰りました。
二
こんなことが毎日のやうに続きました。けれども豆和尚さんは、ちつとも気がつかないでゐましたが、或日《あるひ》ふと納屋を見ると、柴《しば》で一ぱいになつてゐますから、大変驚いて豆小僧に、これは一たいどうしたわけだとききました。
「どうしたわけもありません、私《わたし》が刈り取つて来た柴がこんなに溜《たま》つたのです。」
豆小僧はとぼけた顔で答へました。しかし豆和尚さんはなか/\承知しません。しきりに問ひ詰めますから、豆小僧はとう/\真蒼《まつさを》になつて泣き出しました。
「言はれません、言つたら、お婆《ばあ》さんに殺されてしまひます。」
豆小僧が、うつかりお婆さんと言ひましたので、豆和尚さんも顔色をかへましたが、それつきり何とも言ひません。
けれども翌日《あくるひ》になつて、豆小僧が、また山に柴刈りに行くとき、豆和尚さんの前に出ますと、豆和尚さんは、待てと言つて、四枚のお守札を出して渡しました。
「このお守札は、」と、豆和尚さんは言ひました。「大般若《だいはんにや
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