「お前さんの衣が大へん破れてゐるから、わしが縫つてあげよう。わしの家《うち》は直《す》ぐそこだから、ちよつとお出《い》で……」
 豆小僧は、もちろん恐《こは》い婆さんのうちなどへ行く気はありませんから、断りましたけれど、婆さんはきき入れません。むりに手を取つて、引きずるやうにして、その家《うち》につれこまれました。
「さア/\早く着物をお脱ぎ、縫つてあげるから。」
 婆さんが、さう言ひながら出した針を見ますと、馬の脚から血を取る三角針のやうな大きな針で、じつさい、それには血のかたまりが少しこびりついていました。
 ですから豆小僧はすつかりおつかなくなつて、おちやうづをしたくなつたと言つて、はゞかりへ行かうとしました。婆さんは、恐ろしい顔をして、
「そんなことを言つて、逃げるつもりだらう。よし/\逃げるなら逃げてみろ、かうしてやるから。」と一方の手を鎖でしばつて、便所へやりました。
 豆小僧は鎖をつけたまゝ便所へ入りました。けれども、これから先どうしたらいゝか分らず途方にくれてゐました。すると婆さんは外から待遠しがつて、きゝました。
「豆小僧まだか。」
「まだです。」
 豆小僧は鎖をは
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